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「専利審査指南改正草案(意見募集稿)」のポイント

作者:丁紫玉 岳雪蘭 | 更新しました:2019-05-27 | ビュー:

2019年4月4日、国家知識産権局より「専利審査指南改正草案(意見募集稿)」(以下「草案」と略称)及びその説明が公布され、社会各界への意見が募集されている。

今回の審査指南に対する改正はまだ草案段階中であるが、その内容から中国専利審査実務の変化を感じることができる。皆様の参考になれるために、以下には、当該草案のポイントについて簡単に説明する。

当該草案における出願人と密に関連するものを次のように纏めている。

 

1. 進歩性の判断について

近年、審査の質を向上させるため、また、出願人は質が高い専利出願を提出するようと指導するため、出願の新規性と進歩性に対する審査が強化されてくる。特に、進歩性の判断は、出願が登録になれるかどうかの重要な影響要因となっている。

現行の審査指南において、「3-steps方法」に沿って進歩性を判断することが規定されているが、進歩性の判断には主観的要素による影響があるため、同じ出願に対しても審査官によって異なる結論が出る可能性がある。

そして、審査基準を統一化し、審査過程を規範化するために、当該草案には、進歩性の判断方法がさらに詳しく規定された。これは、次のような点から分かる。

① 審査官が発明を理解する時に、背景技術の全体状況を十分に理解し、背景技術に比べて発明の改善内容を把握することを強調した。

② 「3-step方法」に沿って進歩性を評価する場合、本願発明の実際に解決する技術的課題を確定する際、区別される技術的特徴の一般的な役目または引用文献において果たす役目ではなく、区別される技術的特徴は本願発明において達成できる技術的効果に基づいて技術的課題を確定しなければならないことを強調した。同時に、機能的に互いにサポートされ、相互に作用関係が存在する技術的特徴について、それらのお互いの関係によって本願発明において達成できる技術的効果を全体的に考慮しなければならないことも強調した。

③ 技術的課題の解決に寄与しない技術的特徴は、請求項に記載したとしても、請求項にかかる発明が進歩性を有するかどうかを評価することに影響を与えない、ことを明確にした。

④ 審査官の公知常識を引用する行為が規範化された。特に、審査官は請求項において技術的課題の解決に寄与する技術的特徴を公知常識と認定する場合には、通常、証拠を提供してこれを証明しなければならない、ことを明確にした。

 

2. 面接及び電話インタビューについて

当該草案では、電話インタビューに対する制限が緩和された。実質審査の過程において、必要があれば、審査官及び出願人はともに電話インタビューをすることができ、電話インタビューの議論範囲も形式上の問題に限定されない。また、ビデオ会議、メールなどのインタビューの方式も追加された。もちろん、インタビューにおいて審査官が同意した補正内容について、出願人は、当該補正が施された書類を正式に提出しなければならない。

また、面接については、それを行う条件及び時機に対する制限が適当に緩和され、実質審査手続き中のいかなる段階でも審査官と出願人の両方から要請することができる。しかし、書類や電話インタビューなどにより双方の意見が十分に表現され、関連事実がすでに明確に認定された場合、審査官は、出願人からの面接の要請を拒否することができることも規定された。

上記のように、審査効率の加速化のために、直接な面接はまだ難しいが、審査官とのコミュニケーションがより多様化且つ容易化されるものになっていくと考える。

 

3. 分割出願について

現行審査指南の規定によると、出願人が分割出願について再度分割出願を提出する場合、再度提出される分割出願の提出期限は、依然として最初の親出願を基に審査する。しかし、分割出願に単一性の欠陥があるため、出願人が審査官の審査意見に基づき再度分割出願をする場合、その提出期限は明確に規定されていない。

当該草案では、「分割出願に単一性の欠陥があるため、出願人が審査官の審査意見に基づき再度分割出願をする場合、再度分割出願の提出期限は、単一性の欠陥がある分割出願を基に審査する」ように明確に規定した。

また、分割出願と再度分割出願の出願人の資格、及び分割出願と再度分割出願を提出する時に出願人に関する書誌事項の変更を行う場合の手続きに関する規定もあった。

 

4.審査の順番について

当該草案では、特許、実用新案、意匠である三つの専利出願の審査の順番が統一に規定、一般原則、優先審査、遅延審査のように分けた。

そのうち、特に、「特許出願は、一般的に、実体審査請求の先着順により実体審査を開始しなければならない」ことが明確にした。

また、行政資源の浪費を避けるために、特実同日出願における特許出願は、一般的に、優先審査の対象にならないことが規定した。

遅延審査は、新規追加された審査手続きであり、それを請求する時期及び期限が明確に規定されており、遅延期限は、出願人の請求により1年、2年、3年とすることができる。

 

5.無効段階における証拠の組合せについて

無効審判において、無効請求人は、複数の引用文献を引用し、これら引用文献のいろいろな組合わせに基づいて無効理由を説明する場合が多い。

当該草案では、請求人の様々な組合せを全面的に説明する負担を軽減し、審査の効率を向上させるために、引用文献の優先順位の明確化が要求された。具体的には、「引用文献を組合せて対象特許と比較する場合、2つ又は2つ以上の組合せ方法があれば、最初に最も主要な組合せについて説明を行わなければならない。最も主要な組合せが明記されていない場合には、第1組の引用文献の組合せを最も主要な組合わせとする」ことが規定された。

 

6.その他

① グラフィカルユーザーインターフェースに関する意匠出願について

2014年3月に行った審査指南の改正では、電気を入れた後グラフィカルユーザーインターフェースが表示する製品を意匠の保護の対象とされた。当該草案では、それらの内容を独立して一節にまとめ、さらに詳細な規定を行った。

② ヒト胚幹細胞に関する出願について

科学技術の発展に応じて、ヒト胚幹細胞に関する出願については、専利法25条に基づいて特許の保護対象から完全に排除することが変わった。

 

この草案(意見募集稿)の詳細内容については、国家知識産権局のホームページ(http://www.sipo.gov.cn/tcwj/1137037.htm)をご覧ください。なお、本文に関するお問い合わせは弊所までご連絡ください。