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最高人民法院は「専利権付与・専利権確認に係る行政案件の審理における若干問題に関する規定(一)」(意見募集稿)を公布し、意見を公募

作者: | 更新しました:2020-05-22 | ビュー:

司法解釈の質をさらに向上させるために、仕事の段取りに従って、最高人民法院は、「専利権付与・専利権確認に係る行政案件の審理における若干問題に関する規定(一)」(意見募集稿)を最高人民法院の公式ウェブサイト、公式ミニブログ及び人民法院新聞を通じて社会に公布し、修正案を公に求めることを決めた。2020年6月15日までに、あらゆる分野の方々は郵送、または電子メールにて意見募集稿に対して修正案を提出することができる。


最高人民法院

2020年4月28日



最高人民法院の専利権付与・専利権確認に係る行政案件の審理における若干問題に関する規定(一)

(意見募集稿)


専利権付与・専利権確認に係る行政案件が正確に審理できるように、「中華人民共和国専利法」、「中華人民共和国行政訴訟法」等の法律規定に基づき、裁判の実務を踏まえて、本規定を定める。


第一条

本規定にいう専利権利付与に係る行政案件とは、専利出願人は、国務院専利行政部門が下した専利復審請求審査決定に不服があって、人民法院に提訴する案件である。

本規定にいう専利権確認に係る行政案件とは、専利権者又は無効宣告請求人は、国務院専利行政部門が下した専利無効宣告請求審査決定に不服があって、人民法院に提訴する案件である。

第二条

人民法院が専利権付与・専利権確認に係る行政行為に対して審査を行う範囲は、一般的に原告の訴訟請求及び理由によって確定される。訴訟中に原告から主張されなかったが、国務院専利行政部門の関連認定に明らかに不適切な点が存在する場合、人民法院は、各当事者の意見陳述の後に、関連事由について審査を行って判決を下すことができる。

第三条

人民法院は、専利権付与・専利権確認に係る行政案件を審理する場合、一般的に、当業者に理解されている、発明の目的に適合する通常の意味によってクレームの用語を定義しなければならない。クレームは自ら定義した言葉を採用しており、かつ、明細書及び図面に明確な定義又は説明がある場合、その定義に従う。

前項にいう通常の意味は、当業者に通常に使われている技術辞書、技術マニュアル、参考書、教科書、国家又は業界技術基準等によって確認できる。

クレームの用語を解釈するにあたり、専利出願審査包袋を参照できる。

第四条

請求の範囲、明細書及び図面の中の文法、文字、数字、句読点、図形、記号等に明らかな誤りがあり、当業者は請求の範囲、明細書及び図面を読むことで一義的に理解できる場合、人民法院は、当該一義的な理解によって認定しなければならない。

第五条

専利出願人、専利権者が誠実信用原則に違反し、明細書及び図面の中の具体的な実施形態、データ、図表等の関連技術内容を偽造、変造し、当事者はこれをもって、明細書が専利法第二十六条第三項の規定に合致しないとして、当該技術内容に関連するクレームに対して権利を付与すべきではない、又は無効にすべきだと主張した場合、人民法院はそれを支持しなければならない。

専利出願人、専利権者は偽造、変造した技術内容をもって、関連クレームが専利法の規定に合致すると主張した場合、人民法院はそれを支持しない。

第六条

明細書、図面は特定の技術内容を十分に開示しなかったことで、当業者はクレームに限定の技術案を実施できず、又は有限回数の実験を経てもクレームに限定の技術案によって明細書に記載の解決しようとする技術課題を解決できると確認できない場合、人民法院は、明細書及びクレームが専利法第二十六条第三項の規定に合致しないと認定しなければならない。

当事者は明細書に十分に開示されなかった特定の技術内容のみをもって、クレームが専利法第二十六条第四項の「請求の範囲は明細書を根拠とする」という規定に合致すると主張した場合、人民法院はそれを支持しない。

第七条

当業者は、明細書及び図面を読んで、クレームが次の状況のいずれか一項に該当すると考える場合、人民法院は、当該クレームが専利法第二十六条第四項の「請求の範囲は、権利保護を求める範囲を明確に限定する」という規定に合致しないと認定しなければならない。

(一)クレームに限定の発明のテーマの類型は不明確であり、又は複数のテーマの類型が同時に限定されている場合

(二)クレームの中の技術特徴の意味を合理的に確定することができない場合

(三)技術特徴の間に明らかな矛盾が存在し、かつ、合理的に解釈することができない場合。

第八条

当業者は、明細書及び図面を読んで、クレームに限定の技術案を直接的に得られず、又は合理的に概括して得られない場合、人民法院は、当該クレームが専利法第二十六条第四項の「請求の範囲は明細書を根拠とする」という規定に合致しないと認定しなければならない。

クレームに限定の保護範囲内で、当業者が明らかに排除できる具体的な実施形態以外に、保護範囲内にある他の全ての実施形態が、明細書に記載の当該クレームの技術案によって解決しようとする技術課題を解決できると当業者が合理的に予測できない場合、人民法院は、前項にいう「合理的に概括して得られない場合」に該当すると認定しなければならない。

第九条

明細書、図面に記載の技術内容が相互に矛盾することで、当業者は、クレームに限定の技術案が、明細書に記載の解決しようとする技術課題を解決できると確定できず、当事者は当該相互に矛盾する技術内容をもって、関連クレームが専利法第二十六条第四項の「請求の範囲は明細書を根拠とする」という規定に合致すると主張した場合、人民法院はそれを支持しない。

第十条

クレームの中の機能又は効果によって限定された技術特徴について、明細書、図面に当該機能又は効果を実現するいかなる具体的な実施形態の記載もなく、当事者はこれをもって、当該クレームが専利法第二十六条第四項の「請求の範囲は明細書を根拠とする」という規定に合致しないと主張した場合、人民法院はそれを支持しなければならない。

明細書に、機能又は効果により限定された技術特徴に対応する具体的な実施形態の記載があるが、十分に開示しなかったことで、当業者が当該具体的な実施形態を実現できない場合、明細書、及び当該技術特徴を有するクレームが専利法第二十六条第三項の規定に合致しないと認定しなければならない。

機能、又は効果によって限定された技術特徴は、構造、成分、工程、条件又はそれらの関係などに対して、その発明創造における機能、又は効果によって限定する技術特徴を指す。但し、当業者がクレームを読むだけで、上記機能、又は効果を実現する具体的な実施形態を直接に、明確に確定できる場合を除く。

機能、又は効果の技術特徴以外に、クレームにおいて当該機能、又は効果を十分に実現できる構造、相互関係などの具体的な実施形態がさらに限定された場合、前項にいう機能、又は効果により限定された技術特徴に該当しない。

第十一条 

薬品専利出願人、専利権者は明細書の中の特定の技術効果に関連する技術内容が十分に開示されたことを更に証明するために、出願日以後に実験データを提出し、かつ当業者は出願日に、明細書、図面及び公知常識によって当該技術効果を確認できる場合、人民法院はそれを審査しなければならない。

薬品専利出願人、専利権者は専利出願、又は専利が引例と異なる技術効果を有することを証明するために、出願日以後に実験データを提出し、かつ当業者は出願日に、明細書、図面及び公知常識によって当該技術効果を確認できる場合、人民法院はそれを審査しなければならない。

第十二条

当事者が実験データを提出する場合、人民法院は、実験データの出所と形成過程を証明できる証拠の提出を当事者に要求することができ、前記証拠には、実験素材及びその出所、実験のプロセス、条件、環境又はパラメータ、実験者、実験機構等の、その真実性、関連性及び証明力を影響しうる要素を含む。

当事者は実験データの真実性について議論がある場合、人民法院は法に従って、実験データに対する測定、又は検証を、相応の資格を有する機構、又はすべての当事者に認められる第三者に依頼することができる。

第十三条

明細書に記載された背景技術は専利法第二十二条第五項にいう従来技術とみなされない。但し、出願日前に国内外で公衆に知られたことを証明できる証拠が存在する場合を除く。

明細書及び引例によって開示された内容は、その明確に記載された内容、及び、当業者が直接的に、一義的に確定できる内容を含む。

第十四条 

クレームに限定の技術案の技術分野を確定するにあたり、人民法院は、クレームのテーマ名称及び内容、明細書における「技術分野」に記載の内容及び当該技術案によって実現される機能及び用途を総合的に考慮し、且つ専利の国際分類番号を参考しなければならない。

第十五条

明細書、図面には、クレームに限定の技術案において区別的技術特徴が達成できる技術効果が明記されなかった場合、人民法院は公知常識、区別的技術特徴とクレームの中の他の技術特徴との関係、クレームに限定の技術案における区別的技術特徴の役割などを組合せて、当該クレームの実際に解決する技術課題を認定することができる。

訴訟対象である決定において、クレームの「実際に解決する技術課題」が認定されておらず、又はその認定が誤っている場合、人民法院は法に従って認定した上、クレームの進歩性を認定することができる。

第十六条

人民法院は、意匠に対する一般消費者の知識レベルと認知能力を認定する時に、一般的に、出願日当時の意匠製品の設計空間を考慮しなければならない。

前項にいう「設計空間」の認定について、人民法院は、次の要素を総合的に考慮することができる。

(一)製品の機能、用途

(二)従来設計の全体的な状況

(三)通常設計

(四)法律、行政法規の強制的規定

(五)国家、業界の技術基準

(六)考慮する必要のある他の要素

第十七条

特定の技術機能を実現するために必須であり、又は選択肢が限られている設計特徴は、意匠の全体的な視覚効果に顕著的な影響を与えない。

第十八条

意匠の図面、写真が相互に矛盾し、又はぼんやりしていることで、一般消費者は保護される意匠を図面、写真及び概要説明により確定できない場合、人民法院は、専利法第二十七条第二項の規定に合致しないと認定しなければならない。

第十九条

意匠は同一、又は類する種類の製品の一つの従来設計に比して、全体的な視覚的効果が同一、又は実質的同一である場合、人民法院は、それを専利法第二十三条第一項に規定の「従来設計に該当する」と認定しなければならない。

前項にいう場合以外に、意匠は同一、又は類する種類の製品の一つの従来設計に比して、両者の相違が全体的な視覚的効果に顕著な影響を与えない場合、人民法院は、専利法第二十三条第二項に規定の「明らかな区別」を有しないと認定しなければならない。

第二十条

意匠は同類の製品の同日に出願したもう一つの意匠に比して、全体的な視覚的効果が同一、又は実質的同一である場合、人民法院は、専利法第九条の「同一の発明創造には、一つの専利権しか付与しない」という規定に合致しないと認定しなければならない。

第二十一条

意匠は、その出願日前に出願したが、その後に公告され、かつ、同一、又は類する種類の製品にかかる一つの意匠に比して、全体的な視覚的効果が同一、又は実質的同一である場合、人民法院は、それを専利法第二十三条第一項に規定の「同一の意匠」と認定しなければならない。

第二十二条

従来設計の全体によって提示した設計示唆から、一般消費者は、従来設計の設計特徴を転用、組み合わせ又は置換することにより、意匠と全体的な視覚的効果が同一、又は実質的同一である意匠を得ることを容易に想到し、かつ、独特な視覚的効果を有しない場合、人民法院は、当該意匠が従来の設計特徴の組み合わせに比して明らかな区別を有しないと認定しなければならない。

次の状況のいずれかに該当する場合、人民法院は、前項にいう「設計示唆」があると認定することができる。

(一)単一自然物の特徴を意匠製品に転用する場合

(二)従来設計は、他の特定の種類の製品の設計特徴を専利製品に転用することを開示した場合

(三)同種の製品の異なる部分の設計特徴を組み合わせ、又は置換した場合

(四)従来設計は、異なる特定の種類の製品の意匠特徴を組み合わせることを開示した場合

(五)従来設計の中の模様を意匠製品に直接に用いる場合

(六)単に基本的な幾何学形状を採用し、又はそれに対して細微な変更だけをすることによって得る意匠

(七)一般消費者が熟知している建物、作品、標識の全部、又は一部の設計を用いる場合

第二十三条

人民法院は本規定の第二十二条にいう「独特な視覚的効果」を認定する場合、次の要素を総合的に考慮することができる。

(一)従来設計の全体的状況

(二)設計空間

(三)製品カテゴリの関連度

(四)従来の設計特徴の数量と組合せ難易度

(五)転用、組み合わせ、置換による製品の機能に対する影響

(六)考慮する必要のある他の要素

第二十四条 

専利法第二十三条第三項にいう「合法的権利」には、作品、商標、地理的表示、肖像及び一定の影響力のある商品名称、包装、装飾、企業名称などについて有する合法的な権利、又は権益が含まれる。

無効宣告請求人が提出した証拠により、専利法第二十三条第三項に規定された権利衝突の状況が存在することを証明でき、専利権者から、無効宣告請求人が先行の合法的権利者、又は利害関係者でないため、無効宣告を請求する権利がないと主張された場合、人民法院はそれを支持しない。

第二十五条

国務院専利行政部門は専利復審及び無効宣告請求審査手続きにおいて以下の状況が存在し、当事者から、行政訴訟法第七十条第(三)項の「法定手続きに違反する」という規定に該当すると主張された場合、人民法院はそれを支持しなければならない。

(一)当事者が提出した理由と証拠が漏らされ、且つ当事者の権利に実質的な影響を与えた場合

(二)法に従って審査手続きに参加すべき当事者に通知しなかったことで、当事者の権利に実質的な影響を与えた場合

(三)当事者に合議体メンバーを告知せず、且つ合議体メンバーは法定の回避事由があるが、回避しなかった場合。

第二十六条

国務院専利行政部門は、無効宣告請求人が主張した理由と証拠を超えて審査を行い、かつ職権によって審査できる状況に該当せず、当事者から、行政訴訟法第七十条第(四)項に規定の「職権を超えた」ことに該当すると主張された場合、人民法院はそれを支持しなければならない。

第二十七条

次のいずれかの状況が存在する場合、人民法院は、行政訴訟法第七十条の規定により、訴訟対象である決定の中の誤った部分を取り消す判決を下すことができる。

(一)訴訟対象である決定において、請求の範囲の中の一部のクレームに対する認定は間違っているが、その他は正確である場合

(二)訴訟対象である決定において、専利法第三十一条第二項に規定の一つの意匠出願の中の一部の意匠に対する認定は間違っているが、その他は正確である場合

(三)一部取消す判決を下すことができ、行政機関に取消された部分に対して改めて行政決定をさせるような判決を下す必要のない他の場合。

第二十八条

国務院専利行政部門は、当事者の主張した全ての無効理由及び証拠を審査した後、クーレムの無効を宣告したが、人民法院は、その決定において、クーレムを無効と認定する理由がすべて成立しないと判断した場合、当該決定を全部、又は一部取消す判決を下すべきであって、当該クレームに対して国務院専利行政部門に改めて審査決定をさせるような判決を下さない。

第二十九条

人民法院は発効判決において、関連事実と法律適用について既に明確な認定を行っており、当事者は国務院専利行政部門が当該発効判決の認定に基づき新たに下した審査決定に不服があり、訴訟を提起した場合、人民法院は法により、それを受理しない裁定を下すものとする。既に受理された場合、法により提訴の棄却を裁定するものとする。但し、当該審査決定の認定事実、適用法律が当該発効判決の認定を超え、当事者の権利に新たな不利な影響を及ぼす場合を除く。

第三十条

訴訟対象である決定において、認定事実又は適用法律に誤りがあったが、専利権の無効、又は一部無効と宣告した結論が正しかった場合、人民法院は、係る事実認定及び法律適用を正した上、当該決定を取消すことなく、当該決定が違法であることだけを確認することができる。

第三十一条

当事者は、関連技術的内容が公知常識に属し、又は関連設計特徴が意匠製品の通常設計に属すると主張した場合、人民法院は当事者に十分に説明すること、又は証拠を提出して証明することを要求しなければならない。

第三十二条

国務院専利行政部門は専利権付与・専利権確認手続きにおいて、当事者の主張しなかった公知常識、又は通常設計を自ら導入し、当事者の意見を聴取せず、且つ当事者の権利に実質的な影響が与えられたことで、当事者から、法定手続きへの違反に該当すると主張された場合、人民法院はそれを支持しなければならない。

第三十三条

専利権者は、専利権確認に係る行政案件において、訴訟対象である決定によって無効と宣告されたクレームを維持すべきことを証明するために、新たな証拠を提出した場合、一般的に、人民法院はそれを審査しなければならない。

第三十四条

無効宣告請求人は、専利権確認に係る行政案件の審理手続きにおいて、専利権が無効と宣告されるべきことを証明するために、新たな証拠を提出した場合、一般的に、人民法院はそれを採用しないものとする。但し、以下の証拠を除く。

(一)当事者が無効宣告請求手続きで主張した公知常識、又は通常設計を証明し、且つ行政手続きで国務院専利行政部門から法に従って提示が要求されたが提示できなかった証拠ではないもの

(二)当業者又は一般消費者の知識レベルと認知能力を証明するためのもの

(三)意匠製品の設計空間を証明するためのもの

(四)既に国務院専利行政部門に認められた証拠の真実性、又は証明力を補強するためのもの

(五)前項にいう専利権者が提出した新たな証拠への反論に用いるもの

人民法院は、当事者に前項にいう証拠の提供又は補足を要求できる。

第三十五条

本規定の施行後に、人民法院の係属中の第一審、第二審案件に本規定が適用されるものとする。

本規定の施行前に既に終審したが、本規定の施行後に当事者は再審を請求し、又は法によって再審する案件の場合、本規定が適用されないものとする。

第三十六条

本規定は  年  月  日より施行される。