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パラメーター要件を含 む請求項の審査の動き
2025-04-09
作者:張濤

パラメーターを含む技術特徴によって請求項を限定するのは、化学分野でよく見られる限定方法である。
このように限定された請求項に対する審査の基準にもいくつか独特なところがある。
ここ数年、パラメーターを含む技術特徴に対する中国特許庁の審査がますます厳しくなっていく一方である。
よって、本文は審判及び訴訟の関連案件に基づいてパラメーター要件を含む請求項(以下、説明の便宜上、パラメーター請求項と略称する)に対する審査の動きを紹介する。


1. 背景
2020 年~2022 年、リチウム電池業界の競争が日増しに激しくなるにつれ、中国の一部大手リチウム電池メーカーは、パラメーター請求項を含む特許を大量に取得し、これら特許に基づき、その他のリチウム電池メーカーに対して強気に権利行使を行った。
これにより、特許権侵害の訴訟が頻繁に起こされ、賠償金も徐々に高額になっていった。
この状況において、知的財産権は発明を守り、業界全体の技術発展を促進させる役割を果たしているのか、それとも一部企業が市場を独占するための道具になってしまったのか、と一時期は広く議論されていた。
2022 年 3 月の全国人民代表大会において、ある人民代表は全人代に「リチウム電池業界の市場秩序の規範化について:「問題特許」の濫用による悪意競争行為を避けるための提案」と題する議案を提出した。
当該議案では、「一部の企業は複数のパラメーターを使って複雑な公式をでっち上げて出願を出し、市場ですでに広く応用されていた従来の技術を特許の請求範囲内に収めることで特許を取得した。
これらの特許によって、パブリックドメインの利益は著しく侵害され、相手側が並外れたコストと対価を払ってまで自分の権利を守る羽目に陥る」と明言した。
上述した提案に対して、中国特許庁は、「パラメーター請求項に対して審査を厳格化し審査基準を完璧にさせる」と応答した。
また、最高人民法院は 2023 年 12 月 7 日に下した判決書 (2023 最高法知行終 37 号) において、パラメーター請求項の新規性に対して以下のように明確な意見を出した。
特許権者が非慣用なパラメーターで従来技術を改めて限定することでその発明が「新規性なし」の事実を隠匿することを防止し、且つ社会と公衆の利益を保護するために、特許権者が必ず本発明と従来技術との違いを十分に説明 / 証明しなければならない。
このように、パラメーター請求項に対する審査は、実質審査、審判及び訴訟などの各段階において、いずれも厳格化する傾向が見られる。


2. パラメーター請求項の審査基準の具体的な変化
近年の最高裁の判例及び中国特許局が公表した典型的な事案に基づき、パラメーター請求項に対する審査基準がさらに厳しくなったことがわかる。
その具体的な変化は主に以下の 2 点にある。
(1) 特許権者 / 出願人の立証責任が重くなる、
(2) 新規性以外の拒絶理由も頻発。
3. 案件に基づく詳細な紹介
以下の案件紹介では、説明の便宜上、請求項、審判意見、裁判意見に対して省略、要約する。
3.1. パラメーター請求項の新規性に対する審査
従来では、パラメーター請求項に対して、審査官は往々にして当該パラメーターに基づいて本発明の製品と引例の製品を差別化することができないという理由で、本発明の製品が新規性を有しないと推定する。
これに対して、出願人は対比実験データを提出することで引例の製品が本発明のパラメーターを満足しないことを証明し、新規性を主張することができる。
しかしながら、最近の案例を見れば、現在の審査基準は明らかに厳格化している。
具体的に以下の点が挙げられる。
(1) 特許権者 / 出願人の立証責任が重くなる
特許権者 / 出願人は、引例の製品が本発明のパラメーターを満足しないだけではなく、二者の製品の構造や組成も違うことを証明する必要がある。
(2) パラメーター要件は、限定意味が弱くなってしまう
引用文献の製品が当該パラメーターを満たさないことを証明できたとしても、構造や組成上の相違を証明できなければ、当該パラメーターに基づいて新規性を主張することができない。
案件 1: 圧縮機特許無効事件 [(2023) 最高法知行終 37 号]
[判決の要旨]
最高裁は当該案件でパラメーター請求項の新規性に対する審査基準を確立した。
(1) 「パラメーター請求項に新規性がある」場合の判断基準
パラメーターによって、本発明の製品と引用文献の製品との結構又は組成上の相違を確認できること。
(2) 「パラメーター請求項に新規性がない」場合の判断基準
(2.1) 一般のパラメーターについて
パラメーターによって本発明の製品と引用文献の製品との構造又は組成の相違を確認することができず、且つ特許権者又は出願人が本発明の製品と引用文献の製品が構造又は組成に相違があることを証明できないこと。
(2.2) 非慣用なパラメーターについて
本発明には当該パラメーターの、製品の構造や組成への影響が十分に開示されていない一方、引例には本発明と同じ技術思想が開示されているため、当業者は本発明と引用文献発明とを区別することができないこと。
また、特許権者又は出願人は、二者の製品の構造や組成上の相違を証明 / 説明することができないこと。
[案件内容]
当該案件の請求項 1 は、(前略) スロット隙間部の合計面積とガス通路の全面積との割合 (スロット隙間部の合計面積 / ガス通路の全面積) を、0.3 以上に設定したことを特徴とする圧縮機に関するものである。
本案件では、「スロット隙間部の合計面積 / ガス通路の全面積が 0.3 以上である」という技術特徴は証拠 1 によって開示されていない。
当該技術特徴について、最高裁は、まず、従来技術の調査を経て、「スロット隙間部の合計面積 / ガス通路の全面積」というパラメーターに関連する開示内容が見られないため、当該パラメーターが非慣用なパラメーターに該当すると認定した。
次に、上記パラメーターがスロット隙間部とガス通路を含む圧縮機の構造に対してどのような影響を及ぼすかは、本特許の明細書から読み取れない。
また、本発明では、上記パラメーターの値を 0.3 以上とすることによって、排油量を低減することが可能である。
一方、証拠 1 には隙間部 29 の面積は排油量に影響することが開示されている。
つまり、両者はこの点において技術思想が同一のものである。
さらに、上訴人 (無効請求人) の証拠によれば、証拠 1 に開示されたデータをもとに上記パラメーターを計算すれば、証拠 1 の上記比の値が 0.3 以上となる可能性が高いことが表明された。
これに対して、被上訴人 (特許権者) は本特許の構造や組成と証拠 1 との相違を証明 / 説明できる証拠を提出しなかった。
これにより、最高裁は、証拠 1 に係る製品も本特許の請求項 1 の上記パラメーターを有すると考えて、請求項 1 は証拠 1 に対して新規性を有しないと認定した。
最高裁の上記認定からみれば、請求項中のパラメーターによって構造や組成において本発明の製品と引例の製品とを区別できることは、当該パラメーターに基づいて新規性を主張する必要条件となっている。
3.2. パラメーター請求項の進歩性に対する審査
従来では、パラメーター請求項に対する審査意見は新規性に集中していたが、最近は進歩性に関する審査意見も増えつつある。
パラメーター請求項に対する進歩性審査において、審査官の意見は主に以下の 2 点が多く見られる。
(1) パラメーター要件は相違点としてみなされなくなる
パラメーター要件が引用文献に開示されていないが、当業者が当該パラメーターによって本発明の製品と引例の製品とを区別できないため、引例の製品が同様のパラメーターを有すると推定する。
これは、「同様のパラメーターを有すると推定する」という新規性判定と類似している。
(2) パラメーター要件による効果は承認されない
実施例のデータから、パラメーター要件と効果との関連性を見出せない場合、パラメーター要件による効果が往々にして承認されない。
案件 2: 電子デバイス特許審判事件 [審決第 1435427 号]
[審決の要旨]
請求項中のパラメーター要件について、当該パラメーター要件によって本発明の製品に特定の構造 / 組成があることが反映されるか否かを検討すべきである。
当業者は当該パラメーターによって本発明の製品と引例の製品とを区別できない場合、引例の製品が同様のパラメーターを有すると認定できる。
[案件内容]
当該出願の請求項 1 は、
①0.25μm~1.5μm の範囲の二乗平均平方根高さ (Sq) と、
②0.1~1 の二乗平均平方根勾配 (Sqd) と、を有する、カバーアセンブリを備える電子デバイスに係る。
上記パラメーター①は引例 1 によってすでに開示されているが、上記パラメーター②は引例 1 によって開示されていない。
これに対して、合議体は以下のように指摘している。
上記パラメーター①と②はいずれも表面粗さを示す物理パラメータである。
同じ材料と同じ製造プロセスを使用する場合、パラメーター①とパラメーター②が緊密に関連している。
すなわち、二つの製品パラメーター①が同一の場合、要件②も同一である可能性が高い。
また、明細書には特定の製造プロセスによって特定のパラメーターを実現させる記載がない。
これにより、合議体はパラメーター②が引例 1 によって開示されていなくても、パラメーター①とパラメーター②との緊密な関係に鑑みて、パラメーター②に基づくでは恐らく本発明の製品と引例 1 の製品を構成または組成で区別できないと考える。
よって、引例 1 の製品も上記パラメーター②も満足すると推定した。
案件 3: 研磨パッド特許無効事件 [審決第 42578 号]
[審決の要旨]
明細書に記載のデータから、パラメーターと課題との間に「強い関連性」が見られない場合、当該パラメーターの具体的な選択によって、実質上、技術構成に何ら優れた技術効果がもたらされていないと見なす。
[案件内容]
当該出願の請求項 1 は、半導体基材を平坦化するのに有用な研磨パッドであって、385~750l/Pa の KEL エネルギー損失係数ならびに 100~400MPa の弾性率 E′を有するポリマー材料を含む研磨パッドに係る。
上記請求項 1 に係る KEL エネルギー損失係数及び弾性率 E′のパラメーターは引例 1 によって開示されていない。
また、本発明が解決しようとする課題は、ウェーハの欠陥率を低減することである。
当該特許明細書の表 5A には上記 KEL エネルギー損失係数及び弾性率 E′並びにウェーハの欠陥率が記載されている。

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審決では、合議体は以下のように指摘している。
表 5A の上記 2 つのパラメーターとウェーハの欠陥率との間に何ら正の相関関係が存在しない。
さらに、当業者は表 5A から、KEL および E′とウェーハの欠陥率との規律的な関連性を見出せない。
よって、表 5A のデータでは、パラメーターと欠陥率との「強い関連性」が裏付けられない。
よって、当該パラメーター要件が優れた効果を実現できないため、当該請求項 1 は進歩性を有しないと認定する。
3.3. パラメーター請求項を含む特許の開示内容の充足性に対する審査
案件 4: 電池ユニット特許無効事件 [審決第 563221 号]
[審決の要旨]
予見性の比較的に低い分野では、請求項にパラメーター要件が含まれ、且つ当該パラメーター要件及びその計算式は特定の条件または理想的な条件下で導き出された場合、当業者は明細書の記載内容に基づいて当該パラメーターに係る技術構成が予測の技術効果を得られることを合理的に予測できない。
さらに、明細書には当該パラメーターが相応の技術効果を得られるという実験データが記載されていない。
この場合、当業者にとって、当該パラメーターに係る技術構成が本発明の課題を解決できず、予測される技術効果を得られないことによって、明細書が開示の充足性を満足しないことである。
[案件内容]
当該出願の請求項 1 は、リチウムイオン電池ユニットであって、前記電池ユニットにおける実際の電池セル数 N は 2 以上であり、前記電池セルは熱伝導接続体を介して直接接続され、前記電池ユニットにおけるいずれかの電池セルは熱伝導接続体を介して最小セル数 Nmin-1 以上のセルに直接接続され、電池ユニットの最小セル数 Nmin は、次式で表される、リチウムイオン電池ユニットに係る。
式:Nmin=k1・Welyt/Wcell。
本案では、発明者らは、従来のリチウム電池において、一つの電池セルが熱を生じた場合、その熱量は快速に他の電池セルに伝導させることができない。
このため、熱量が蓄積した結果、電池セルが燃焼する。
したがって、本発明の発明者らは本発明で一つの電池セルが燃焼したときに生じた熱を快速に電池ユニット中の他の電池セルに伝導させることで、電池セルの温度の快速上昇を防止して、電池ユニット整体の燃焼および暴発を防止する新たな電池セル接続の方法を創出した。
とりわけ、電池ユニットの最小セル数を限定することで、上記課題を解決した。
しかしながら、合議体は当該電池ユニットの最小セル数が上記課題を解決するという点に対して異議をとなえた。
すなわち、上記の式は、非常に理想的な条件 (極めて厳酷な条件) に基づき導き出したものであり、且つ多くの条件や要因を無視した結果でもある。
上記式だけで限定の最小セル数は本発明の課題の解決にとって足りない。
さらに、明細書に上記理想的な条件以外でも上記課題を解決できる実施例や実験データがない。
よって、合議体は当該特許が開示内容の充足性を満足しないと認定した。


3.4. パラメーター特許のサポート要件の審査
案件 5: 医薬組成物特許無効事件 [審決第 42606 号]
[審決の要旨]
測定パラメーターまたは技術効果によって限定された請求項に関しては、前記パラメーターを備える、または前記効果を実現できるすべての実施形態を包括すると理解されるべきである。
もし当該パラメーターまたは効果は明細書の実施例に記載の特定の方法で達成されるものであり且つ当業者は前記特定の方法以外にもいかなる代替の方法でも請求項に限定の測定パラメーターまたは技術効果を満足する技術構成を知ることができないのであれば、当該請求項の保護範囲は明細書の開示範囲及びそれが従来の技術に対する貢献が対応しないことになる。
よって、当該パラメーターまたは効果は明細書によってサポートされていない。
[案件内容]
当該出願の請求項 1 は、アダリムマブと医薬として許容される担体を含み、プロカテプシン L の活性が 1.84RFU / 秒 /mg アダリムマブ未満である、医薬組成物に係る。
当該発明が解決しようとする課題は、医薬組成物中のプロカテプシン L を含む宿主細胞タンパク質の量を低減することである。
合議体は上記「前記組成物は、プロカテプシン - L の活性が 1.84RFU / 秒 /mg アダリムマブ未満である」という技術特徴は明細書によってサポートされていないと判断した。
その具体的な理由は以下のとおりである。

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合議体は、以下のように判断した。
明細書の表 13 から、プロセス B2 (12K) を用いた場合のみ、最終 UF/DF 保持液が 1.84 以下であるという結果を得ることができた。
ならば、当業者は上記特定の工程以外の他の工程も上記パラメーター及び効果を実現できることを予測することができない。
よって、請求項が明細書によってサポートされない。


3.5. パラメーター請求項の明確性に対する審査
案件 6: 光開始剤特許無効事件 [審決第 564757 号]
[審決の要旨]
化学製品に係る請求項に関しては、公衆に特許権の請求範囲の限界を明確に理解してもらうために、請求項の範囲を明確に確定すべきである。
パラメーター要件で化学製品を定義する場合、特許権者と公衆との権利の境目を明確に確定できなければ、前記パラメーターによって定義した化学製品は明確ではないとみなされる。
[案件内容]
当該出願の請求項 1 は、下記式で表される 3 - メチル - 4’- フェニルベンゾフェノンであって、その休止角の範囲は 52.9°-63.8° である光開始剤に係る。
上記休止角のパラメーターに対して、合議体は以下のように指摘している。
休止角は周囲温度または湿度などの外部条件及び要素によって変化する。
よって、本発明の製品を他の 3 - メチル 4’- フェニルベンゾフェノン製品と特定の休止角だけで区別するとき、請求の範囲 (つまり上記製品) の境界を明確に確定することができない。
よって、当該請求項は明確ではないと認定する。
4. 出願書類を作成する際のアドバイス
以上の案件に基づき、パラメーター要件を通して請求項を限定しようとする場合、審査官による拒絶理由をできる限り避けるためにはどのように明細書を作成すればよいのかについて、以下のようにアドバイスする。
4.1. 明細書にパラメータを実現させるための手段を明記
パラメーターに基づくだけでは本発明の製品と引例の製品とを区別することができないという審査官の指摘がよく見られる。
よって、明細書を作成するとき、当該パラメーターを実現させるための具体的な技術手段もあわせて明細書にできる限り記載したほうが好ましい。
これらの具体的な手段として、
・製品の構造、
・製品の組成 (成分、含有量など)、
・製品の製造方法 (工程及び条件) などが挙げられる。
例えば、とあるパラメーターは製品の各成分の特定の含有量を調整することで実現したものであれば、明細書に各成分の特定の含有量を明確に記載し、同時に当該特定の含有量を満足する実施例、並びに当該特定の含有量を満足しない比較例を記載することができる。
審査官に当該パラメーターによって本発明の製品と引例の製品とを区別することができないと指摘された場合、両者の製品を区別するために、当該特定の含有量を請求項に追加限定することで対応することができる。
また、明細書にこれらの手段とパラメーターとの関連性も明記したほうがよい。
当該関連性を明細書で技術説明の形で説明してもよく、また実施例の形式で記載してもよい。
さらに、審決の過程における補正の便宜上、当該パラメーターを得るための手段を従属クレームとして明細書に記載してもよい。
案件 7: アリーレンエーテル特許無効事件 [審決第 560904 号]
[案件内容]
当該出願の請求項 1 は、モノフェノールとジフェノールとを含むモノマーの酸化共重合生成物であるポリ (アリーレンエーテル) 共重合体であって、ジフェノールは 2,2 - ビス (3,5 - ジメチル - 4 - ヒドロキシフェニル) プロパンであり、25℃のクロロホルムで測定する時に、前記ポリ (アリーレンエーテル) 共重合体は 0.04~0.15L/g の特性粘度を有する、共重合体に係る。
当該特性粘度に対して、合議体は以下のように考える。
重合体の特性粘度は主に重合体の分子鎖によって決められる。
一方、本発明の重合体は、ジフェノールの原料も証拠 1 と異なるし、分子鎖もかなり異なる。
よって、証拠 1 中の重合体も同様の特性粘度を有すると認定できない。
本案では、重合体の構成の特徴 (モノマーと分子鎖) に基づいて本発明の製品と引例の製品を区別することができた。
これにより、特性粘度が相違点として認められ、進歩性を主張できた。
4.2. 明細書にパラメータと課題 / 効果との関連性を明記
案件 3 のように審査官にパラメーターと効果との関連性がないため、パラメーターが優れた技術効果を達成していないと指摘されることを避けるためには、明細書にはパラメータと課題 / 効果との関連性を明記することを勧める。
当該関連性を明細書で技術説明の形で記載してもよく、また実施例のデータで示してもよい。
案件 8: インペラ特許無効事件 [審決第 567499 号]
当該出願の請求項 1 は、回転軸からシュラウドの外周縁部までの寸法 Da が回転軸から補助羽根までの外縁部の寸法 Db より大きく、且つ Db/Da が 0.65~0.95 であるインペラに係る。
上記 Db/Da が 0.65~0.95 であるという技術特徴に対して、当該特許の明細書には課題との関連性が記載されている。
すなわち、明細書に「Db が 0.65Da~0.95Da の時、シュラウド、サイドライナーおよび補助羽根の摩耗が特に減少することがわかる。
これは、補助羽根の先端およびシュラウドの外周の間に後流渦をとらえる十分な空間があることが原因であると考えられる」という内容が記載されている。
つまり、明細書では以下のような論理関係が示されている:
Db/Da が 0.65~0.95 (パラメーター)→後流渦をとらえる十分な空間を作る (関連性)→摩耗が減少する (課題)。
合議体は、本特許の明細書に当該パラメーターによってインペラの構造にどのような変化をもたらし、且つ当該構造上の変化によってどのような課題が解決され、効果を達成したのかが明確に記載されていると考えた。
よって、当該パラメーターが実現できる技術効果は審査官に認められた。
4.3. 明細書にパラメータと効果との関連性を示すデータを明記
パラメーターの数値と効果との関連性を示すためには、明細書にパラメータと効果との関連性を示すデータを明記することを勧める。
特に、パラメーターの数値の変化にともない、効果も規律的に変わることを示せるデータがあれば、パラメーターと効果との間に緊密な関連性があると認められる。
したがって、当該パラメーターに基づいて発明の進歩性を主張できる。
4.4. 明細書にパラメータの単一要素対比実験のデータを記載
とあるパラメーターによる技術効果について認定する場合、単一要素対比実験のデータを用いたほうがよい。
「単一要素対比実験のデータ」とは、複数の実験において、実験条件中ただ一つの条件を変え、その他のすべての条件を変えずに得られた実験データのことである。
例えば、パラメーターの数値範囲が 10~60 であるとして、下記表 1A はパラメータのみ変更してその他の条件が全く同様である「単一要素対比実験のデータ」である。
パラメーターの数値のみ変化したため、効果の変化は当該パラメーターの数値の変化によって必然的に引き起こされたと見てよい。
一方、表 1B では、複数の条件が変化しているので、効果の変化はどの条件の変化によるものなのか見極めることが難しい。

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                                  表1A                                                       表1B


4.5. 明細書にパラメータの定義、計算方法、測定方法などを明記
非慣用なパラメーターに関しては、当該パラメーターの測定方法、計算方法に関する記載の不足が原因で請求項が不明確になることを避けるために、明細書に当該パラメータの定義、測定方法 (測定手順、条件、機材など)、計算方法 (計算式、各変数の数値の確定方法など) などを明記したほうがよい。


5. おわりに
パラメーター請求項に対する審査基準が厳しくなる一方ではあるが、化学分野において、パラメーター要件で限定するのは避けて通れない請求項の書き方である。
よって、当該パラメーターによって本発明と引例との構成または組成上の相違があり、且つ当該パラメーターと技術効果との間に強い関連性があることを審査官により理解してもらうために、パラメーターの具体的な特徴に応じて、明細書に当該パラメーターの関連情報を記載する。
これにより、当該パラメーターに基づいて本発明の新規性と進歩性を確立する。