知財情報

標準必須特許(SEP)に関する事例について

作者:赵碧洋 | 更新しました:2016-05-11 | ビュー:


近年以来、クアルコム案件とIDC案件の影響で、SEPに関連する特許権の実施は広く注目されてきた。SEPと特許権者の態度もそれらの案件の発展につれて繰り返し変化した。


SEPは最初に特許権者を保護するものと見なされていた。しかし、SEPの実施の際に、特許権者はSEPの特徴を利用し独占行為をし、ライセンス交渉もしくは訴訟の相手に対して有利な立場をとるという状況が意識された。よって、裁判所と政府はSEP特許の実施を規制しはじめ、例えば、上記クアルコム案件とIDC案件において、裁判所と政府機関が独占禁止審査を行った。


独占禁止法違反のリスクを避けるために、RANDもしくはFRAND条項に従わざるを得ないので、特許権者は一般的に提訴する前に、ライセンス交渉をする必要がある。また、あるSEPに関し、裁判所に禁止令を請求することが難しいという問題もある。SEPに対するこれらの規制のため、潜在的な被許諾者は逆に特許権者に対して有利な立場をとり、ライセンス交渉を故意に遅延させることで、ライセンス条件を低く設定させることがある。知的財産の保護を促進しようとする社会で、これらの特許権者に不利なことも注目された。


    このように、SEPに関する最近の特許権侵害訴訟案件について検討しようと思う。この案件において、WAPI(Wireless LAN Authentication and Privacy Infrastructure)という国家強制標準に関するSEPを持つ特許権者である西安西電捷通無線ネットワーク通信株式会社は2015年に、ソニーモバイルコミュニケーションズ(中国)株式会社が上記SEPを侵害したことを主張して特許権侵害訴訟を提起し、2016年2月に北京知的財産権裁判所にて開廷審理が行われた。なお、最高人民裁判所が2016年4月に発表した「特許権侵害紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する最高人民法院の解釈(二)」には、非強制性の国家、業界、もしくは地方標準に関する必須特許の実施について規制はされたが、強制性の国家標準などに関する必須特許の実施について規制はされていない。これについて、西安西電捷通VSソニーの案件の審判結果は参考となると考える。