近日、最高人民法院知的財産権法廷は臨時保護期間満了後の方法特許侵害紛争事件を結審した。方法特許侵害の認定基準、方法特許の実施行為には合法的出所抗弁が適用されないこと、などの法律適用問題を明らかにし、特許権者、特に方法特許の権利者の合法的権益を効果的に保護し、同種事件の審理に一定の参考的意義を持っている。
本件の基本的な状況は以下の通りである。
三原告は、特許「ポット容器組立台及び組立方法」(特許番号201510465803.9)の権利者である。特許権の臨時保護期間(注:特許出願の公開日から登録日までの期間)中、ある会社は被疑侵害品であるポット型容器組立台を購入し、この組立台を使ってポット型容器製品を製造し、係争特許の登録後も引き続き製造行為を実施していた。 三原告は特許権侵害として訴訟を提起した。
一審人民法院は、被疑侵害品の製造、販売行為が特許権の臨時保護期間中で行われ、特許権侵害ではないため、特許登録後この被疑侵害品を使用する行為は権利侵害にもならないと認定し、さらに被告の合法的出所抗弁が成立すると認定した。三原告は不服で、最高人民法院に上訴した。
最高人民法院は、被告が係争特許の登録後にも被疑侵害品を引き続き使用し、特許方法を実施した行為は特許侵害行為を構成し、合法的出所抗弁は成立しない、と認めた。理由は下記通りである。
先ず、合法的出所抗弁は賠償責任を免除する抗弁であり、善意第三者を保護する制度を特許法上具体的に表すものである。その適用対象は特許侵害製品の使用者、販売者、販売申立者に限られ、特許方法の実施者が含まれない。合法的出所抗弁は特許方法を実施する行為には適用されないため、現行法律と司法解釈の規定を突破して特許方法を実施する権利侵害行為に対して合法的出所抗弁を適用してはならない。
次に、製品特許について、合法的出所抗弁は実質的にその製品の物理的条件によって制限され、使用者は無制限に係争特許を実施することはできない。そのため、製品特許の場合、合法的出所抗弁を認めても特許権者の利益を過度に損なうことがない。一方、方法特許については、通常、前述の製品の物理的条件による制限を受けず、特許方法を実施する侵害行為に対して合法的出所抗弁を適用すると、侵害者は無制限に特許方法を実施することができ、特許権者の利益を過度に損なうことになる。
最後に、合法的出所抗弁は、特許侵害製品を使用することで実質的に特許方法を侵害する行為には及ばない。製品特許と方法特許の保護範囲の拡張性が異なっており、方法特許の保護範囲は特許方法により直接に取得した製品に及ぶことができるが、製品特許の保護範囲は製品自体に及ぶだけで、その製品の使用方法に及ぶことはない。製品特許の保護範囲が特許製品の使用方法に及ばないため、合法的出所抗弁は特許方法を実施する侵害行為にも及ぶことはできない。
以上の理由で、被告が侵害行為を停止し、原告に対して経済損失及び合理的な支出530余万元を賠償する、と最高人民法院は改めて判決を下した。