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柳沈律師事務所の代理案件は最高裁で逆転勝訴

作者: | 更新しました:2017-10-12 | ビュー:

近日、中国最高裁は2つの案件について、行政再審判決を下し((2016)最高法行再94号、95号)、それぞれ対応する二審判決を取消し、特許法第26条第3項の「明細書の開示要件」について、二審判決と反対する判断を示した。

特許法第26条第3項における「明細書の明確性要件」について、最高裁は、明細書の記載内容の明確性を判断する際に、当業者が明細書に記載された発明を実現できるか否かを基準とし、単なる明細書における誤りがあるかどうかやその誤りの程度によって判断してはならないと認定した。

紛争特許は複雑な紡績機械の構造に関するものだ。その有効性は、無効段階、行政訴訟第一審、行政訴訟第二審及び最高裁再審と合わせて4回の審理を経た。

無効決定では、特許明細書に記載された発明について当業者の視点から明細書の全体的な内容に基づいて理解し、当業者の知識レベルに相応しい解釈となった。 

その後、第一審判決において、この解釈が認められ、明細書に記載された発明の内容が明確で充足であるか否かを判断する際、明細書及び図面全体に基づいて把握すべきであり、明細書の文脈と図面の内容とは一致であり明確である場合、当業者は発明の内容を明確に理解できると認定された。

然るに、第二審判決ではこの観点と全く反対の意見が示された。第二審判決では、実施例の内容が細かく審査され、明細書に誤りが存在するため、記載された発明の内容はそれによって不明瞭になり、充分ではない。当業者にとって、過度な労働や大量の修正がなければ特許発明が実現できないと認定した。そして、第二審により第一審判決が取消された。

第二審判決の上記判断には検討する余地があるため、権利者は引き続き最高裁に再審請求を提出した。最高裁にてヒアリングを行った後、本案を審理することにした。最後に、最高裁は「適当性」の原則に従い、「明細書の開示要件」について以下のように認定した。

即ち、「本件明細書において、不明確なところが存在しているが、ほとんどは本特許の背景技術や従来技術に関する記載である。そのため、当業者にとって、本特許明細書の記載内容を読む際、不明確な部分のもともとの技術的な意味を理解できる。また、本発明を再現する時に、自分の理解も組合わせて特許発明を実現できるはずである。そのため、明細書の開示明確性について、判断基準は当業者が発明を理解して実現できるか否かであり、誤りの数や程度を判断基準としてはならない。」 

最高裁はさらに明細書がどのように開示すべきかに対しても一般的な説明をした。即ち、「明細書は明確であるか否かや十分であるか否かは、読者のレベルに関わる。明細書の明確性及び完全性を判断することも、明細書に誤りが存在するか否かを判断することも、その主体は一般人ではなく、当業者である。当業者が明細書に開示された内容を読む際に、明細書における誤りを見付かって修正でき、この修正により請求項にかかる発明の内容が変更することもなく、請求項の公開性及び安定性を損ないとすれば、明細書における誤りを修正させないことは、特許権者が取得する利益が、それがもたらした社会的貢献に相応しくなくなる。」 

最後に、最高裁は「適当性」原則に従って以下の内容を認定した。即ち、「発明を保護し、発明を励む原則に基づき、権利化された特許の明細書に存在する誤りを修正したうえで理解することが許される一方、特許権者がこの権利に対する濫用も防止しなければならない。要するに、特許法の立法する本意——発明を励まし、科学技術の進歩及び経済社会の発展を促進することに合致するように、特許の明細書に存在する誤りを正確に特定し、特許権者の利益と公衆利益とのバランスを取らなければならない。」 

この方針に基づいて、最高裁は、本特許明細書は既に本発明の技術内容に対して明確で完全な説明を行ったと認定し、第二審判決を取り消し、第一審判決を維持した。

弊所の彭久雲弁護士及び姚冠揚弁護士は特許権者の代理人として本件を担当し、陶鳳波弁護士は本件をサポートした。