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2019年度中国最高裁最高人民法院の知財控訴案件審理状況

作者:王佳棟 | 更新しました:2020-03-12 | ビュー:

先日、中国最高人民法院の知財裁判法廷から2019年度レポートが発表された。該レポートの内容を下記のようにまとめる。

 

1.最高人民法院の知財裁判法廷の構成

最高人民法院の知財裁判法廷は2019年1月1日に設立され、その中に8つの合議廷、訴訟サービスセンター、総合オフィスが設けられており、総人数は140名で、その内、裁判官は42名である(裁判官の中に修士が26名、博士が16名で、理工系出身者が9名、海外留学経験者が7名いる)。

 

2.受理案件数と結審案件数



2019年1月~12月、最高人民法院の知財裁判法廷は知財控訴案件1945件を受理し、1433件が結審になって、結審率は73.7%もあった。結審までの平均的な審理時間について、民事・行政控訴案件の場合は73日で、管轄権異議申立控訴案件の場合は29.4日であった。



最高人民法院の知財裁判法廷に受理された知財控訴案件のうち、一審が北京、広州、上海の知財裁判所に対応されたケースが多くて(それぞれ378件、297件、143件)、Top3を占めている。また、南京、深セン、寧波、蘇州、杭州、青島などの都市は経済が発達して、知財紛争も多発している。

 

3.受理した民事控訴案件及び行政控訴案件の内訳


民事控訴案件926件のうち、Top3は実用新案侵害紛争案件(47%)、特許侵害紛争案件(24.3%)、ソフトウェア紛争案件(14.8%)で、権利行使には実用新案が多く使われていることが分かる。なお、ソフトウェア紛争案件の内、8割以上は契約関係の紛争案件であった。

行政控訴案件241件のうち、Top3は特許無効審判の行政控訴案件(33.2%)、特許出願拒絶査定不服審判の行政控訴案件(29.5%)、実用新案無効審判の行政控訴案件(23.7%)であった。なお、出願拒絶査定不服審判の行政控訴案件において、控訴人(出願人)が個人であるケースが多かった(結審になった57件の内、43件の控訴人が個人でした)。

 

4.民事控訴案件及び行政控訴案件の結審状況


上記民事控訴案件の結審状況に、管轄権異議申立控訴に関するデータが含まれていない。ただの時間稼ぎの手段としてよく被告に利用されているから、管轄権異議申立控訴で一審の裁定が覆される割合はわずかの4.7%しかなかった。結審になった民事控訴案件において、控訴が取下げられ、又は調停によって解決したケースは合計284件もあって、総件数の50%ぐらいを占めている。一方、一審判決が覆されたケースの割合が11.3%しかなかった。


結審になった行政控訴案件において、一審判決が維持されたケースの割合は88.7%もあって、民事控訴案件の(40.3%)倍以上になっている。一方、一審判決が覆されたケースの割合が僅かの4.7%しかなかった。

 

5.渉外控訴案件の状況


渉外控訴案件のうち、民事控訴案件と行政控訴案件の割合はそれぞれ30%くらいであった。渉外控訴案件における管轄権異議申立の控訴案件の割合は40.8%もあって、非渉外控訴案件の8.6%より遥かに大きい。


地域・国別から見ると、他の国と比べて、ヨーロッパとアメリカの当事者にかかる渉外控訴案件は圧倒的に多くて、日本の当事者にかかる控訴案件は15件で、総件数の9%くらいを占めている。

渉外民事控訴案件のうち、外国当事者側、又は香港・マカオ・台湾当事者側が勝訴したケースの割合は70%近くになっている。

 

参考サイト:https://www.chinacourt.org/article/detail/2020/04/id/4974262.shtml