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中国の部分意匠審査の最新動向

作者:冯晓燕 陈钘 | 更新しました:2023-09-25 | ビュー:

今年5月以降、中国国家知的財産権局は部分意匠出願に対して審査を開始し、数多くの審査意見通知書を発行していた。2021年に専利法が改正された後、部分意匠が導入された。部分意匠の審査実務は国内外の出願人が常に注目している。改正専利法に対応する審査指南はまだ公表されていないため、本稿では、我々が現在理解する部分意匠の審査基準、及び出願段階で直面した具体的な問題と対応方法を紹介する。


一、審査基準

現在、審査を起動する根拠は2023年1月に公表された『国家知的財産権局による改正後の専利法に関連する審査業務処理暫定弁法に関する公告(第510号)』である。そのうち、第1条の規定は以下の通りである。

「専利出願人は、2021年6月1日(当日を含む、以下は同じ)より、紙または電子の形で、専利法第2条第4項によって製品の保護を請求する部分意匠出願を提出することができる。

部分意匠を出願する場合、製品全体の図面を提出し、虚線実線で組み合わせるか、またはその他の方式で保護を請求する内容を表明しなければならない。保護を請求する部分に立体形状が含まれている場合、提出した図面にその部分をはっきりと表示できる立体図を含めなければならない。製品全体の図面で虚実線を組み合わせて保護を請求する内容を表明していない場合、簡単な説明に保護を要求する部分を明記しなければならない。」

以前、中国の部分意匠の審査基準に対する我々の理解は、主に国家知的財産権局が公布した『審査指南』の修正草案であり、その中で上記規定の内容が審査指南の部分意匠に対する規定とは一致している。


二、具体的な出願実践

5月から現在まで、部分意匠出願について、弊所はすでに数百件の審査意見通知書と補正通知書を受け取っていた。特許局の部分意匠審査部は7月中旬に弊所に来訪し、部分意匠に関する調査を行った。出願人に参考をするために、通知書および調査活動によって提供された情報に基づいて、審査におけるいくつかの焦点問題を以下のようにまとめる。


2.1製品名に保護を要求する部分の名称を説明しなければならない。

例えば、部分的に携帯電話のカメラが表示されると、製品名は「携帯電話」ではなく、「携帯電話のカメラ」でなければならない。保護を請求するのは製品主体であり、保護を請求しない内容は製品上の細かい構造である場合、製品名は「携帯電話」ではなく、「携帯電話の主体」でなければならない。

また、製品名と対応するように、簡単な説明で製品用途は製品全体の用途+製品の部分的な用途という形にて説明しなければならない。例えば、携帯電話のカメラは、製品全体が通信、ホームページの閲覧、プログラムの実行などに使われ、製品の一部が写真の撮影や撮影に使われる。


2.2製品に関連する独立した区域を形成したり、比較的に完全なデザインユニットを構成したりしなければならない。

保護を請求する部分が製品上で独立しなく、完全なデザインユニットである場合は、補正する必要がある。この要件とは、境界線が閉鎖するデザインユニットで、境界線が不完全であれば(部分的に破線で削って)完全なデザインユニットを構成しないことを指す。

図1の部分デザインは、出願人が製品本体から一点鎖線を使って人為的に製品を分割し、保護を請求する部分自体に独立した完全な構造線がなく、このような部分デザインは中国では保護されることができない。

図1


2.3製品表面の模様または模様と色彩との組み合わせだけではいけない。

保護を請求する部分意匠は、製品表面の模様や模様と色彩との組み合わせだけではいけない。中国国家知的財産権局がフラットデザインに対する定義は、一般的な理解よりも範囲が広い。例えば、図2に示す服装の表面の模様、図3のボトルの上面の四角い模様は一般的に理解されている製品の表面模様であるが、中国国家知的財産権局は実際の審査では、図3のボトルの中央部が90度の角を持つ構造、すなわち、非二次元模様についても「平面模様」または「フラットデザイン」と認識する。したがって、出願時には、保護を請求する部分が上記の例で示した「平面」に属しているかどうかを注意すべきである。

図2                                                                      図3

2.4同じ製品の2つまたは2つ以上の接続関係のない部分意匠であってはならない。

接続関係がないとは、空間的に離間されており、かつ機能的・デザイン的に互いに関連する領域がないことを指す。図4の製品の前部ラベル部と製品下方のブレーキブロック(黄色領域)のように、両者は構造的に接続されておらず、機能的・デザイン的に独立しているため、このような部分デザインは一つの部分意匠として保護することはできず、2つのデザインとしてそれぞれに出願を提出しなければならない。

図4

2.5保護を請求する部分と請求しない部分にはっきりした境界線を有しなければならない。

図5に示すように、保護を請求する部分と請求しない部分にはっきりした境界線がなく、このような部分意匠は認められない。図6に示すように、保護を請求する部分と請求しない部分にはっきりした境界線があり、このような部分意匠は認められる。

2.6保護を請求する内容は、単純な幾何形状、模様、または製品が属する分野の通常デザインだけで構成してはならない。

保護を請求する部分構造が比較的に簡単である場合や、保護を請求しないものを除外した後、保護の請求する部分の形状を単一にする場合、工業製品であれグラフィカルユーザインタフェースであれ、特に長方形、楕円形などの表示枠、ダイアログだけが残っているグラフィカルユーザインタフェース(図7)の場合、審査官に「保護を請求する内容は簡単な幾何形状のみで構成されている」、あるいは「保護を請求する内容はマン・マシンインターフェースと関係がない模様で構成されている」という理由で、新しいデザインではないと認められやすい。特に、このような拒絶理由について、審査官は引用文献としての先行意匠を提供する必要がなく、応答で解消することが困難である。

図7

三、展望

現在、中国の部分意匠に対する審査基準は比較的に厳しい。国家知的財産権局も出願人と代理機関の意見を求めて、部分意匠の審査業務を改善する可能性を絶えずに模索している。弊所が最近特許局とのコミュニケーションによると、特許局はいくつかの要求を適切に緩和するか、例えば、図5に示すように、製品上部が比較的に完全なデザインユニットの部分意匠と判断できるかを考え直している。次の大きな動きは、近いうちに専利法実施細則と審査指南が発表、実施される可能性がある。弊所は部分意匠の審査動向を注目し、最新の進展を随時に紹介する。