『最高人民法院による第一審知的財産権に係る民事及び行政事件の管轄に関する若干規定』(以下は『規定』という)が2022年4月20日に公布され、2022年5月1日から施行された。
知的財産権事件の増加に伴い、各地の管轄基準が統一されておらず、各級人民法院の管轄配置が整備されていない、という問題が日増しに顕著になっている。知的財産訴訟の管轄制度をさらに改善し、裁判所の裁判機能を合理的に位置づけるため、最高人民法院は『中華人民共和国民事訴訟法』、『中華人民共和国行政訴訟法』などの法律規定に基づき、知的財産裁判の実践と結び付けて、本規定を制定する。
『規定』は合計6条である。そのうち、第1条に「発明専利、実用新案専利、植物新品種、集積回路レイアウト設計、ノウハウ、コンピュータソフトウェアの権利帰属、侵害紛争及び独占紛争に係る第一審の民事及び行政案件は、知的財産法院、省、自治区及び直轄市の人民政府の所在地の中級人民法院及び最高人民法院が定めた中級人民法院によって管轄されるものとする」、と規定されている。第2条に「意匠専利の権利帰属、侵害紛争及び馳名商標の認定に係る第一審の民事および行政案件は、知的財産法院と中級人民法院によって管轄され、最高人民法院の承認を得て、意匠専利の行政案件を除き、基層人民法院によって管轄されることができる」、と規定されている。
以下の表にまとめることができる。
権利類型 |
紛争類型 |
事件類型 |
管轄法院 |
発明専利、実用新案専利、植物新品種、集積回路レイアウト設計、ノウハウ、コンピュータソフトウェア |
権利帰属紛争 権利侵害紛争
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第一審民事及び行政事件 |
知的財産法院 省、自治区及び直轄市の政府所在地の中級人民法院 最高人民法院が定めた中級人民法院 |
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独占紛争 |
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意匠専利 |
権利帰属紛争 権利侵害紛争 |
第一審民事事件 |
知的財産法院 中級人民法院 最高人民法院の承認を得た基層人民法院 |
商標 |
馳名商標の認定 |
第一審民事及び行政事件 |
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意匠専利 |
権利帰属紛争 権利侵害紛争 |
第一審行政事件 |
知的財産法院 中級人民法院 |
上記事件以外の第一審知的財産権事件は、国務院部門、県レベル以上の地方人民政府または税関の行政行為に係る場合、または訴額が最高人民法院が定めた金額以上である場合、中級人民法院によって管轄される。訴額が最高人民法院が定めた金額に達していない場合、最高人民法院が定めた基層人民法院によって管轄される。
最高人民法院は『基層人民法院が管轄する第一審知的財産権民事及び行政事件の基準に関する通知』(以下は『通知』という)を同時に公布した。『通知』では、知的財産権民事、行政事件の管轄権を有する基層人民法院、その管轄区域、及び管轄される第一審の知的財産に係る民事訴訟の訴額の基準が明確された。
参考サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-355871.html
https://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-355831.html