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権利侵害者に明らかな過ちがあり、かつ権利侵害行為によりビジネスチャンスに影響を及ぼした場合の権利侵害による利益の計算について

作者:隋 怡文 | 更新しました:2023-03-24 | ビュー:

最近、最高人民法院知的財産法廷は、AE&E GEOMICROBIAL THEHNOLOGIES社(以下は原告会社と略称する)vs. InSoil Energy Technologies社(以下は被告会社と略称する)及び元社員のノウハウ侵害紛争案件((2021)最高法知民終1363号)を結審し、被告人は権利侵害を構成し、直ちに権利侵害行為を停止し、経済的損失200万元及び合理的支出50.7万元を連帯して賠償するよう判決を下した。

本案において、原告会社は『技術独占ライセンス契約』を通じ、主に微生物油ガス探査に用いる係争ノウハウを取得した。羅○○、李○、胡○○、張○○は原告会社の元社員であり、被告会社に勤めている。原審法院が原告会社を訪れて証拠保全を行った際に、李○のパソコンに保存されていた「微生物油ガス探査採集技術規程」、「微生物油ガス探査海洋沈積物検査測定基準」等の内容が、原告会社が主張するノウハウの内容と完全に一致し、又は基本的に同一であることを発見した。

2017年5月、被告会社はROC石油(中国)社のROCプロジェクトを落札し、最終的にプロジェクトの代金735万元を受け取った。被告会社はROCプロジェクトで係争ノウハウを使用した。

審理の結果、原告会社が主張した技術情報はノウハウを構成し、被告の行為は権利侵害を構成したと認定し、経済的損失50万元、合理的支出25万元を賠償する判決は第一審法院が下した。

原告会社は賠償額が低過ぎる点に不服し、訴訟を提起し、被告会社らが係争侵害行為を直ちに停止し、経済的損失200万元及び合理的支出50.7万元を賠償するよう判決を請求した。

最高人民法院は第二審を行い、原告会社が主張した技術情報はノウハウを構成したと認定し、被告の元社員のパソコンに保存された複数の文書には、係争ノウハウが含まれており、元社員は文書起草者として守秘義務に違反し、被告会社に係争ノウハウを開示し、被告会社はプロジェクトにおいて係争ノウハウを使用したため、被告会社と元従業員はいずれも権利侵害を構成すると認定した。

賠償金額について、最高人民法院は審理の結果、本件において、元社員が元の会社のノウハウを侵害し、実際の経営においてそのノウハウを使用したことには、明らかに主観的悪意があると認定した。また、係争技術情報の応用分野は油ガス微生物探査分野であり、市場競争が十分な通常の商業分野ではなく、被告会社が原告会社に属していたビジネスチャンスを不当にかすめ取ったと推定できる。この場合、被告会社に悪意ある低価格競争入札行為が存在するか否か、使用したノウハウの技術貢献率の大きさ等は、いずれも賠償金額の計算に影響しない。本件の既存の証拠と合わせ、被告会社が落札したプロジェクトにおいて実際に受領した金額735万元×当該プロジェクトの営業利益率27.91%にしても、被告会社の実際の利益は200万元を超える。従って、最高人民法院は原告会社が第二審において主張した賠償額及び合理的支出を全額支持した。

本件の二審判決は明確である。被訴侵害者に明らかな過ちがあり、かつ技術秘密の侵害行為が権利侵害者のビジネスチャンスの取得、又は権利者のビジネスチャンスの喪失に影響を及ぼした場合、権利侵害による利益を計算する際に、原則として、ノウハウが利益への貢献率を考慮せず、権利侵害者の全ての利益を権利侵害による利益とみなしてよい。


参考サイト:https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-2153.html