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最高人民法院は知的財産権の懲罰的損害賠償に関する司法解釈を発表

作者:侯 佳奕 | 更新しました:2021-04-29 | ビュー:

最高人民法院は、『知的財産権民事侵害事件の審理における懲罰的損害賠償の適用に関する解釈』(以下『解釈』)を公布し、2021年3月3日から施行する。

『解釈』は、合計7つの条文があり、知的財産権民事侵害事件における懲罰的損害賠償の適用範囲、故意および深刻な情状の認定、計算基準と倍数の決定などに対して具体的な規定を作り出した。その目的は、裁判基準の明確化を通じて、各級法院が懲罰的損害賠償を正確に適用し、知的財産権への重大な侵害行為を処罰するよう指導する。

『解釈』のハイライトは次のとおりである。

第一に、「故意」と「悪意」の関係を明らかにした。

『解釈』の第1条は、「この解釈で言及される「故意」には、商標法第63条第1項および反不正競争法第17条第3項に規定されている「悪意」が含まれる」と規定している。

民法典には懲罰的損害賠償の主観的要件として「故意」であることが規定されている一方、商標法第63条の第1項、反不正競争法第17条第3項には「悪意のある」と規定している。実務上、「故意」と「悪意」を厳密に区別することは困難であるため、「故意」と「悪意」とを同一性をもって解釈するようにする。これにより、「悪意」が商標・不正競争の分野に適用され、「故意」が他の知財分野に適用されるという誤解を防止できる。

第二に、「故意」の認定基準が決定された。

「故意」とは、侵害者の主観的な心理状態を反映しており、それをどのように判断するかは、実務において常に難しいことである。『解釈』の第3条は、「知的財産権への故意な侵害を認定するために、人民法院は、侵害された知的財産権の種類、権利の状態、関連製品の知名度、被告と原告または利害関係者との関係などの要素を総合的に考慮しなければならない」と明確に述べている。さらに、権利侵害の故意があると初歩的に認定できる幾つかの状況を具体的に列挙し、裁判官は客観的な事実の認定を通じて権利侵害の意図があるかどうかを判断するよう指導する。

第三に、「深刻な情状」の認定基準が明確化された。

「深刻な情状」は懲罰的損害賠償の構成要件の1つであり、主に侵害手段及び侵害の結果などの客観的なことに関連し、一般に侵害者の主観的状態を含まない。『解釈』の第4条は、「知的財産権への重大な侵害行為の認定について、人民法院は、侵害の手段と回数、侵害行為の持続時間、地理的範囲、規模、結果、訴訟における侵害者の行動などの要素を総合的に考慮しなければならない」と規定しており、重大な侵害行為があると認定できる幾つかの状況を具体的に列挙し、裁判基準のを統一するのに役立っている。

第四に、懲罰的損害賠償の基数の計算方法を明らかにした。

『解釈』の第5条は、「人民法院が懲罰的賠償額を決定する際に、関連する法律に従い、それぞれ原告の実際の損失額、被告の違法所得額または権利侵害によって得た利益を計算基数としなければならない」と規定している。この計算基数には、侵害を阻止するために支払われた原告の合理的な費用は含まれていない。法律で別途定められている場合には、その定めに従う」と規定している。『解釈』はまた、被告が挙証妨害行為をした場合、人民法院は原告の主張と提供した証拠を参照にして懲罰的賠償額の基数を決定することができると規定している。

『解釈』の公布は、懲罰的損害賠償制度を実行するための重要な措置であり、人民法院が知的財産権の司法保護を全面的に強化する決意を示しており、技術革新のための法的環境をさらに最適化するために重要な意義を持つ。 


参照URL:http://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-288861.html