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北京高級人民法院による「知的財産権侵害民事案件の審理における懲罰的賠償の適用に関する審理指南」が公布

作者:隋 怡文 | 更新しました:2022-07-04 | ビュー:

北京高級人民法院は、4月25日付、「知的財産権侵害民事案件の審理における懲罰的賠償の適用に関する審理指南(以下は、審理指南)」を発表した。審理指南は即日発効した。

審理指南は、6部分に分け51条からなり、懲罰的損害賠償の適用や計算方法などに関する実質的問題や手続き上の問題を具体的に規定している。同時に、審判の実践と合わせ、それぞれの知的財産権案件に懲罰的賠償を適用する一般規定をまとめた。さらに、懲罰的賠償要件の認定を簡素化し、故意侵害の認定と情状深刻の認定を創設的に規定した。また、懲罰的賠償を適用する賠償総額の算定方法を明確にし、懲罰的賠償の適用に明確な計算方法を提供した。

そのうち、「審理指南」の第二部分において、故意権利侵害かつ情状深刻の認定要件が整理された。第2.2条は、故意権利侵害と認定できる状況を列挙している。例えば、権利侵害者が悪意をもって他人の馳名商標を抜け駆け登録して使用し、権利侵害商品又はサービスを宣伝又は提供する際に権利者の標識を意図的に「商標消去」を行った場合、並びに知的財産権行政主管部門が権利侵害通知を出した後も権利侵害行為を継続して実施した場合などには、権利侵害者が権利侵害行為の実施に対して明らかな主観的な故意があったと認定できる。第2.4条では、侵害行為の情状が深刻であるとの認定を列挙している。例として、同一の権利侵害者が複数のルートで権利侵害動画を配信する、同一の権利者又は同一の知的財産権に対し複数回の権利侵害行為を実施する等の状況、侵害者が権利者の権利行使過程において不当な手段により証拠収集を妨害する等の状況が含まれる。

『審理指南』の第三部分には、懲罰的賠償を適用する計算方法を明確にした。賠償総額=基数+基数×倍数の和、と確定し、実際の損失、権利侵害による利益等の賠償基数を計算する際の考慮要因を詳細に列挙する。同時に、懲罰的賠償の倍数の共通の考慮要因及び異なるタイプの知的財産権侵害の個別的な考慮要因を規定し、懲罰的賠償金額の計算に十分な根拠を提供する。「審理指南」第3.20-3.21条において「懲罰的賠償の適用の約定」及び「懲罰的賠償の約定内容」が規定される。これにより、「審理指南」は約定賠償が懲罰的賠償に適用できることを初めて明確に規定した地方裁判所の参考文書となった。

特筆すべきは、プラットフォーム経済ガバナンス規則の最適化を推進するために、『審理指南』第4部分には、ネットワークサービス提供者への懲罰的賠償の適用について具体的な規定を設けたことである。4.1条は、次のことを明確にしている。ネットワークサービス提供者が、ネットワーク利用者にそのネットワークサービスを利用して権利侵害行為を実施するように教え、又はネットワーク利用者がそのネットワークサービスを利用して他人の知的財産権を故意に侵害したことを明らかに知りながら、正当な理由なく削除、遮断、リンクの切断等の必要な措置を講じない、又は講じるのを遅らせ、重大な知的財産権侵害行為を発生させた場合、権利者は法院にネットワークサービス提供者に対する懲罰的賠償の適用を請求する権利を有する。

今時目立っているインターネットライブ中継による商品販売、代理購入行為に関する知的財産権侵害については、第4.7条には、ネットワークサービス提供者がライブ中継の販売者、代理購入人がそのネットワークサービスを利用して故意に知的財産権を重大に侵害したことを明らかに知りながら、正当な理由なく合理的かつ有効な措置を講じて制止しなかった場合、法によりライブ中継の販売人、代理購入人と共同で懲罰的賠償責任を負うと規定されている。

『審理指南』の公布は、現在のインターネットプラットフォーム経営における侵害多発分野の懲罰的賠償の適用ニーズに速やかに応え、知的財産権民事事件における懲罰的賠償の適用基準をより一層規範化し、裁判基準を統一するのに有益である。



参考サイト:https://www.court.gov.cn/zixun-xiangqing-357041.html

                        http://society.people.com.cn/n1/2022/0425/c1008-32408533.html