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被疑侵害品の使用者は、製造者の先使用権に基づいて非侵害抗弁を主張できる ——(2022)最高法知行終839号

作者:隋 怡文 | 更新しました:2023-11-07 | ビュー:

最高人民法院知識財産法廷は、被疑侵害品の使用者の先使用権抗弁に係る上訴案件において、被疑侵害品の使用者がその使用行為について、製造者の先使用権に基づいて非侵害抗弁を提出することができると認定した。


本案において、特許権者の中鵬公司は、広臨公司が被疑侵害品である設備2台を使用する行為が係争特許権を侵害しているとして、市場監督管理局に特許権侵害紛争の処理を請求した。市場監督管理局は、被疑侵害品の技術方案は全体的に係争特許権の保護範囲に入るが、広臨公司による被疑侵害品の使用は先使用であり、かつ元の範囲内での引き続き使用であるため、先使用権の行使行為に該当し、特許権侵害とはみなさないと認定した。中鵬公司はこれを不服として、第一審法院に行政訴訟を提起し、2台目の被疑侵害品には合法的な出所がなく、先使用を構成しないと主張した。第一審法院は、広臨公司が2台目の被疑侵害品の購入時期及び出所を証明する証拠を提出しておらず、「元の範囲内で引き続き使用」を証明できず、広臨公司の先使用権抗弁は成立しないと認定した。広臨公司はこれを不服として、最高人民法院に上訴した。最高人民法院は第一審判決を取り消し、中鵬公司の訴訟請求を棄却した。


特許法第七十五条第二項の規定によると、特許出願日以前に同様の製品を製造した、又は同様の方法を使用したか、あるいは既に製造と使用の必要準備を終えており、かつ元の範囲内だけで引き続き製造、使用する場合、特許権侵害とはみなさない。先使用権者が元の範囲内で引き続き製造した製品、又は特許の方法に基づいて直接に獲得した製品は侵害品に該当せず、当該先使用権者が特許出願日前に既に製造した製品も当然侵害品該当しない。第三者が特許出願日前に当該先使用権者が既に製造した製品、元の範囲内で製造した製品又は特許の方法に基づいて直接に獲得した製品を特許出願日後に使用、販売の申出、販売した場合も、特許権侵害行為を構成しない。


本件の場合、係争特許の出願日前に、2台の被疑侵害品の製造者はいずれも被疑侵害品を実際に製造していた。被疑侵害品は、先使用権者が係争特許の出願日前に既に製造した製品であり、先使用権者が元の範囲内で引き続き製造した製品又は特許の方法に基づいて直接に取得した製品と同様であるが、依然として侵害品に該当しない。


先使用権を設定する主な目的は、正常な生産経営を保護し、先願主義の不足を補うことにある。製造者が先使用権者として先使用権を有する場合には、その元の範囲内で製造された被疑侵害品は侵害品に該当せず、当該被疑侵害品を後から購入・使用した第三者も同様に権利侵害を構成しない。そうでなければ、先使用権制度を設ける本意に反する。従って、被疑侵害品を使用する行為について、使用者は製造者が有する先使用権に基づいて非侵害抗弁を主張することができる。


製造者が先使用権者であることを前提に、製品の使用者は先使用権抗弁を主張することができる。これは実際の生活において先使用権者が製造した製品が市場で正常に流通できないという不公平な結果を防ぐことができ、市場取引秩序の安定に有利である。