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『最高裁判所による知的財産法廷の若干問題に関する規定』が改正

作者:隋 怡文 | 更新しました:2023-12-29 | ビュー:

2023年10月27日、中国最高裁判所は『知的財産法廷の若干問題に関する規定』の改正に関する決定(『改正規定』と略称する)を公布し、『改正規定』は2023年11月1日から施行された。

 主な改正点は以下のようになる。


1.実用新案、ノウハウ及びコンピュータソフトウェアに係わる権利帰属上訴事件、民事上訴事件、行政上訴事件は、最高裁判所知的財産法廷が管轄しない。

『最高裁判所知的財産法廷の年度報告書(2022)』によると、最高裁判所知的財産法廷が2019~2022年の間に受理した8436件の民事二審実体事件のうち、以上3種類の知的財産権に係わる紛争事件が58.5%を占めている。今回の改正により、最高裁判所知的財産法廷は、管轄する案件の内容が変更され、受理件数がこれから大幅に低減されると予測する。


2.上記1に述べたような上訴事件が、重大で複雑である場合、依然として最高裁判所知的財産法廷が管轄する。

 「重大で複雑である」の判断基準が明確に示されていないが、『最高裁判所による地方各級裁判所の第一審知的財産権民事事件管轄標準の調整に関する通知』を参考すると、実用新案、ノウハウ、コンピュータソフトウェアに係わる権利帰属事件、民事事件、行政事件については、訴訟額が2億元以上の場合、訴訟額が1億元以上で一方の当事者の住所地が法院の管轄区に所属ではない、又は海外、香港・マカオ・台湾にかかわる場合、各地の高級裁判所が第一審の管轄権を有し、最高裁判所知的財産法廷が第二審の管轄権を有する、と理解できる。

 上述の条件を満たさない場合、これら事件は、各地の知的財産裁判所、中級裁判所及び最高裁判所が指定した基層裁判所が第一審の管轄権を有し、第一審法院の上級裁判所が第二審の管轄権を有すると理解できる。


3.「知的財産法廷は、知的財産権の権利帰属、権利侵害、権利付与・権利確認など関連事件の状況を開示するよう当事者に要求することができる。当事者が真実の開示を拒否した場合、この行為は信義誠実の原則を遵守しているか否か、権利濫用となるか否かなどを認定する考慮要素とすることができる」という規定が新設された。

近年、知的財産権関連事件が増加し続けているなか、信義誠実の原則に反して権利濫用の疑いのある訴訟がしばしば発生している。今回の改正により、知的財産法廷は当事者に関連事件の状況を開示するよう要求することができ、信義誠実の原則に反する権利濫用行為の判断・識別に、重要な意義がある。



参考サイト:https://ipc.court.gov.cn/zh-cn/news/view-2600.html