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『中華人民共和国専利法』第四回目の改正が可決、2021年6月1日より施行

作者:丁 萌、候 佳奕、李子陽 | 更新しました:2020-11-04 | ビュー:

2020年10月17日、『全国人民代表大会常務委員会による「中華人民共和国専利法」を改正することに関する決定』が可決され、専利法は12年ぶりに改正することになった。改正後の専利法が2021年6月1日より正式に施行される。

今回改正の最も重要な内容は、下記のようである。改正内容は下線で標記する。


1.部分意匠制度の新設

第2条第4項を下記のように改正する。

「意匠とは、製品の全体又は一部の形状、図案又はその組み合わせ及び色彩と形状、図案の組み合わせに対して行われ、美観に富み、かつ工業への適用に適した新たな設計を指す」。


2.会社の職務発明創造に対する処置権の明確化

第6条第1項を下記のように改正する。

「当該単位の職務を遂行して、又は主に当該単位の物質・技術条件を利用して完成した発明創造は職務発明創造とする。職務発明創造について専利を出願する権利は当該単位に帰属し、出願が認可された場合は当該単位を専利権者とする。当該単位は、法によってその職務発明の専利を出願する権利及び専利権を処分し、関連する発明創造の実施と運用を促進することができる」。

(*注:単位とは、会社や組織の意味である。)


3.職務発明の発明者に対する保護の強化

第16条を第15条に改正し、第2項を追加する。

国家は、専利権を付与された単位が所有権による激励を実施し、株式、オプション、配当等の方式によって、発明者又は考案者に合理的に革新の収益を共有させることを推奨する」。


4.専利権濫用の禁止

1条を追加し第20条とする。

専利出願及び専利権の行使は誠実信用原則に遵守しなければならない。専利権を濫用して公共利益又は他人の合法的権益を損害してはならない。

専利権の濫用による競争を排除又は制限し、独占行為を構成する場合は、『中華人民共和国独占禁止法』によって処理する」。


5.専利情報の利用の強調

第21条第2項を下記のように改正する。

「国務院専利行政部門は専利情報公共サービス体系の建設を強化し全面的、正確且つ適時に専利情報を公布し、専利基礎データを提供し、定期的に専利公報を出版し、専利情報の伝播と利用を促進しなければならない」。


6.新規性喪失の例外規定に公共利益の目的で初めて公開した場合の追加

第24条に1項を追加して第1項とする。

「専利を出願する発明創造について、出願日前 6 カ月以内に以下の状況のいずれかがあった場合、その新規性を喪失しないものとする。

(一)国家において緊急事態又は非常事態が発生される時に、公共利益の目的で初めて公開した場合」。


7.原子核変換方法自身は専利権を付与できないことの明確化

第25条第1款第5項を下記のように改正する。

「以下の各項について専利権を付与しない。

(五)原子核変換方法及び原子核変換方法を用いて取得した物質」。


8.意匠出願の国内優先権制度の新設

第29条第2項を下記のように改正する。

「出願人が発明又は実用新案を中国で初めて専利出願した日から12 カ月以内に、又は意匠を中国で初めて出願した日から6月以内に、国務院専利行政部門に同様の主題について専利を出願する場合、優先権を受けることができる」。


9.優先権手続きの調整

第30条を下記のように改正する。

「出願人が発明、実用新案専利の優先権を主張する場合、出願する時に書面による声明を提出しなければならず、かつ最初に出願した日から16月以内に最初に提出した専利出願書類の副本を提出しなければならない。

出願人が意匠専利の優先権を主張する場合、出願する時に書面による声明を提出しなければならず、かつ3月以内に最初に提出した専利出願書類の副本を提出しなければならない。

出願人が書面による声明を提出しておらず、又は期限を過ぎても専利出願書類の副本を提出していない場合は、優先権を主張していないものと見なされる」。


10.意匠専利権の保護期間の延長、専利期限補償に関する規定の追加

第42条を下記のように改正する。

「発明専利権の存続期間は20年とし、実用新案専利権の存続期間は10年とし、意匠専利権の存続期間は15年とし、いずれも出願日から起算する。

発明専利の出願日から満4年で、かつ実体審査請求日から満3年後に発明専利権が付与された場合、国務院専利行政部門は、専利権者の請求に応じて、発明専利の権利化の過程で不合理な遅延について専利権の存続期間の補償を与えるべきである。ただし、出願人に起因する不合理な遅延はこの限りでない。

新薬品販売の審査、評価、承認にかかった期間について、中国で販売許可を得た新薬品の発明専利に対して、国務院行政管理部門は、専利権者の請求に応じて、専利権期間補償を与えることができる。補償期間は、5年を超えないものとし、新薬品承認・販売後の合計の専利権存続期間が14年を超えないものとする」


11.専利の実施と運用の促進

1条を追加して第48条とする。

国務院専利行政部門と地方政府の専利業務管理部門は、同級の関連部門と連携して措置を取ることで、専利公共サービスを強化し、専利の実施及び運用を促進しなければならない」。


12.専利開放実施許諾制度の新設

1条を追加して第50条とする。

専利権者は自ら書面にて国務院専利行政部門に、自分の専利を如何なる単位、個人に対してその専利の実施を許諾する意思がある旨を声明し、且つ実施料の支払い方法と基準を明確にした場合、国務院専利行政部門はそれを公告し、開放許諾を実行する。権利者は実用新案および意匠について開放許諾を声明する場合、専利権評価報告書を提出しなければならない。

専利権者は開放許諾の声明を取り下げる場合、その旨を書面にて提出しなければならず、国務院専利行政部門はその取下げを公告する。開放許諾声明が公告によって取り下げられた場合、その前に与えられたた開放許諾の効力には影響しない」

1条を追加して第51条とする。

「如何なる単位又は個人が専利の開放許諾にかかる専利を実施する意思がある場合は、書面にて専利権者に通知し、公告された実施料の支払い方法と基準に従って実施料を支払うと、該専利の実施許諾を取得する。

開放許諾の実施期間中、専利権者が納付する年金を相応に減免する。

開放許諾を実施した専利権者は、実施料について被許諾者と協議して通常実施許諾を与えることができるが、該専利の独占的または排他的実施許諾を与えてはならない」

1条を追加し、第52条とする。

「当事者は開放許諾の実施について紛争があった場合、当事者は交渉して解決するものとする。交渉を望まない、または交渉が失敗した場合は、国務院専利行政部門に調停を請求するか、人民法院に提訴することができる」


13.侵害紛争の利害関係者および被疑侵害者による専利権評価報告書の自発的な提出

第61条を第66条に改正し、第2項を下記のように改正する。

「専利権侵害紛争が実用新案又は意匠に関連する場合、人民法院又は専利業務管理部門は専利権者又は利害関係者に対し、国務院専利行政部門が関連する実用新案又は意匠に対して検索、分析及び評価後に作成した専利権評価報告書を、専利権侵害紛争の審理、処理のための証拠として提出するよう要求することができる。専利権者、利害関係者および被疑侵害者は、専利権評価報告書を自発的に提出するもできる」。


14.専利偽称に対する懲罰の強化

第63条を第68条に改正し、内容を下記のように改正する。

「専利を偽称した場合、法に基づき民事責任を負うほか、専利の法執行を担当する部門が是正を命じかつ公告するとともに、違法所得を没収し、違法所得の5倍以下の罰金を併科すことができる。違法所得がない場合、又は違法所得が5万元以下の場合は、25万元以下の罰金を科すことができる。犯罪を構成する場合は法によって刑事責任を追及する」。


15.専利行政執行の具体的な措置の明確化

第64条を第69条に改正し、内容を下記のように改正する。

専利の法執行を担当する部門は、その取得した証拠に基づいて被疑専利偽称行為を取り締まる場合、以下の措置を取る権限を有する。

(一)関連当事者を尋問し、被疑違法行為に関連する事情を調査すること

(二)当事者の被疑違法行為の場所に対して現場検査を実施すること

(三)被疑違法行為に関連する契約、領収書、帳簿及びその他の関連資料を閲覧・複製すること

(四)被疑違法行為に関連する製品を検査すること

(五)専利を偽称する製品であることを証拠によって証明できる場合は、封印し又は差押えることができること。

専利事務管理部門が専利権者または利害関係者の請求に応じて専利侵害紛争を処理する場合、前項()()()に記載の措置を講じることができる

専利の法執行を担当する部門、専利業務管理部門が、法によって前二項に規定される職権を行使する場合、当事者は協力し、助力を提供しなければならず、拒否したり、妨害したりしてはならない」。


16.専利侵害紛争の行政執法管轄の確定

1条を追加し、第70条とする。

国務院専利行政部門は専利権者また利害関係者の請求に応じて、全国で重大な影響を及ぼす専利権侵害紛争を処理することができる。地方人民政府の専利事務管理部門は、専利権者また利害関係者の請求に応じて専利権侵害紛争を処理する時に、本行政区域においてその同一な専利権を侵害する事件に対して合併して処理することができる。区域を跨ってその同一な専利権を侵害する事件に対し、上級地方人民政府の専利事務管理部門に処理を請求することができる」。


17.懲罰的損害賠償制度の確定、法定賠償額の引き上げ及び権利者の立証難度の低減

第65条を第71条に改正し、下記のように改正する。

「専利権侵害による賠償金額は、権利者が権利侵害によって被った実際の損失又は権利侵害者の侵害行為によって取得した利益にに基づいて算定する。権利者の損失又は侵害者が取得した利益の算定が困難である場合、当該専利の実施料の倍数に参酌して合理的に算定する。故意に専利権を侵害し、情状が深刻である場合、上記方法で算出した金額の15倍で賠償金額を確定することができる。

権利者の損失、侵害者の取得した利益及び専利許諾実施料の確定がいずれも困難である場合、人民法院は専利権の種類、権利侵害行為の性質及び情状等の要素に基づき、3万元以上500万元以下の賠償金額と算定することができる

賠償額には、権利者が侵害行為を差し止めるために支払った合理的な支出も含まなければならない。

人民法院は賠償金額を確定するために、権利者がすでに全力を尽くして立証しており、権利侵害行為に関連する帳簿、資料が主に侵害者が保有する状況で、権利侵害行為に関連する帳簿、資料の提供を侵害者に命じることができる。侵害者は提供せず、又は虚偽の帳簿、資料を提供した場合、人民法院は権利者の主張と提供した証拠を参考にして賠償額を判定することができる」。


18.提訴前の財産保全制度の新設、提訴前の仮処分規定の調整

第66条を第72条に改正し、内容を下記のように改正する。

 「専利権者又は利害関係者は、他人が専利権利を侵害し、専利権の行使を妨げる行為を行っているまたは行おうとすることを証拠により証明でき、速やかに制止しなければ、その合法的権益が補填不能な損害を被る恐れがある場合、提訴する前に、法によって人民法院に対して、財産保全、特定な行為を行わせる又は特定な行為を禁止するに係る措置を取るように請求することができる」。


19.訴訟時効の延長

第68条を第74条に改正し、内容を下記のように改正する。

「専利権侵害訴訟の時効は3とし、専利権者又は利害関係者が権利侵害行為及び侵害者を知った日又は知り得た日より起算する。

発明専利の出願公開から専利権付与までの間に当該発明を使用し、かつ適当な額の使用料を支払っていない場合、専利権者が使用料の支払いを要求する訴訟時効は3とする。専利権者は他人がその発明を使用していることを知った日又は知り得る日より起算する。但し、専利権者が専利権付与日以前に知った場合又は知り得る場合は、専利権付与日より起算する」。


20.医薬品専利の紛争早期解決メカニズムの新設

1条を追加し、第76条とする。

医薬品販売の審査、評価、承認の過程において、医薬品販売許可申請者と関連する専利権者又は利害関係者との間で、登録申請された医薬品の専利権をめぐって紛争が生じた場合、当該当事者は人民法院に対して、登録申請された医薬品の技術方案が他人の医薬品専利権の保護範囲に入っているか否かについて判決を求めることができる。国務院薬品監督管理部門は所定の期間内に、人民法院の効力がある判決に基づいて、当該医薬品の販売承認を一時停止するか否かを決定することができる。

医薬品販売許可申請者と関連する専利権者又は利害関係者は登録申請された医薬品の専利権をめぐる紛争について、国務院専利行政部門に行政裁定を請求することができる。

国務院薬品監督管理部門は、国務院専利行政部門と連携して医薬品販売許可の審査と医薬品販売許可の申請段階における専利紛争解決に関する具体的なつなぎ合わせ方法を制定し、国務院の同意を取得する上で実施する」。


参考リンク:

http://www.xinhuanet.com/2020-10/18/c_1126624476.htm