2019年9月23日に「専利審査指南」の改正の決定が公表された後、2019年11月12日、国家知識産権局により「専利審査指南第二部分第9章の改訂草案(意見募集原稿)」が更に公表された。
該改正草案は、第二部分の第9章において、第6節を追加し、AIやインターネット+、ビッグデータ、ブロックチェーンなどに係わる特許出願の審査基準を規定した。
近年、インターネット技術及び情報技術の絶え間ない発展に伴い、AIなどの新技術や新分野、新業態の発明・創造が絶えず現れ、このような発明・創造の特許出願に対するニーズも日々高まっている。このような発明の解決手段には、通常、技術に加え、アルゴリズムや、ビジネスルール・メソッドなどの知的活動の規則及び方法特徴が含まれる。今回の審査指南の改正草案は、このような出願の審査規則を細分化した規定を設けた。
該改正草案の主な内容は、以下のとおりである。
1.特許を審査する際に、技術的特徴と、アルゴリズムやビジネスルール・メソッドに関する特徴とを簡単に切り離してはならない
審査の一般的なルールとして、審査の際に、技術的特徴と、アルゴリズムやビジネスルール・メソッドの特徴などとを切り離すべきではなく、請求項に記載されるあらゆる内容を1つとして、該当技術的手段、解決しようとする技術的課題及び技術的効果を分析しなければならないことを強調した。
2.技術的特徴を含むとすれば、特許法第25条に基づいて特許対象から除外されてはならない
請求項がアルゴリズムの特徴やビジネスルール・メソッドの特徴に関わると、当該請求項が全体として知的活動の規則及び方法であるか否かについては、当該請求項がさらに技術的特徴を含むか否かによって判断する。請求項がアルゴリズムの特徴やビジネスルール・メソッドの特徴に加えて、技術的特徴も含めば、特許法第25条第1項第(2)号に基づいて特許権付与可能性を否定できない。
3.特許法第2条の審査基準の明確
請求項が1つの全体として、特許法第25条第1項第(2)号に規定される、特許権の付与が除外される場合に該当しないと判断できれば、さらに、当該請求項が特許法第2条第2項に記載される技術的手段に該当するか否かについて審査する必要がある。技術的手段に該当するか否かの判断については、「専利審査指南」の共通規定における技術的課題、技術的手段、技術的効果という「三要素」に基づく判断方法のもとに、審査基準をさらに細分化した。アルゴリズムに具体的な技術の適用分野を組み合わせて、ある技術的課題を解決できれば、特許法第2条の審査を通ることができる。
具体的には、例えば、請求項において、アルゴリズムに関する各ステップが、解決しようとする技術的課題との密接な関係を反映する場合、例えば、アルゴリズムによって処理されるデータが技術分野において確実な技術的意味を有するデータであり、アルゴリズムの実行が、自然法則を利用して或る技術的課題を解決するプロセスを直接に反映し、かつ技術的効果が得られる場合、一般的に、当該請求項の解決手段は、特許法第2条第2項に規定される技術的手段に該当する。
アルゴリズムの特徴やビジネスルール・メソッドの特徴を含む特許出願は、技術的課題を解決していないか、技術的手段を利用してないか、あるいは、技術的効果が取得されないであれば、特許法第2条第2項に規定される技術方案に該当しないので、特許保護の対象に該当しない。
4.新規性及び進歩性についての審査
技術的特徴に加えて、アルゴリズム特徴やビジネスルール・メソッド特徴を含む特許出願について進歩性の審査を行う際に、技術的特徴と機能上サポートし合い、相互作用関係にあるアルゴリズム特徴やビジネスルール・メソッドと、上記技術的特徴とを1つとして考慮しなければならない。進歩性の審査にあたっては、上記アルゴリズム特徴やビジネスルール・メソッド特徴の、技術案への貢献を考慮しなければならない。
「機能上サポートし合い、相互作用関係にある」とは、アルゴリズム特徴やビジネスルール・メソッド特徴が、技術的特徴と密接に結合し、ある技術的課題を解決する技術的手段を共同で構成し、その相応の技術的効果を取得可能であることをいう。具体的には、アルゴリズムが具体的な技術分野に適用されて具体的な技術的課題を解決するか、あるいは、ビジネスルール・メソッド特徴の実施において技術的手段の調整や改善が必要とされる場合、該アルゴリズム特徴や該ビジネスルール・メソッド特徴と技術的特徴とが、「機能上サポートし合い、相互作用関係にある」と認められる。
5.明細書及び特許請求の範囲の記載要件の細分化
明細書の作成要件をさらに細分化し、明細書には、技術的特徴と、アルゴリズム特徴やビジネスルール・メソッド特徴とがどのように共同で作用し、有益な効果を取得するかを明記しなければならないことが言及された。
どのように共同で作用するかについては、例えば、アルゴリズム特徴を含む場合、抽象的なアルゴリズムを具体的な技術分野に結合させるべきであり、ビジネスルール・メソッド特徴を含む場合、技術的課題を解決するプロセスの全体について詳しく記載・説明すべきである。
有益な効果の記載について、使用者の視点から言うと、客観的に使用者の体験を向上させる場合、明細書に説明されてもよい。この場合、発明を構成する技術的特徴、及びそれと機能上サポートし合い、相互作用関係にあるアルゴリズム特徴やビジネスルール・メソッド特徴が、どのように共同で、このような使用者の体験の向上をもたらすのか、又は発揮するのかを同時に説明すべきである。
特許請求の範囲の作成について、請求項には技術的特徴、及び、技術的特徴と機能上サポートし合い、相互作用関係にあるアルゴリズム又はビジネスルール・メソッドを記載しなければならないことが強調された。
上記審査基準を説明するために、今回の改正案では、特許主題及び進歩性に関する審査例を10件追加した。
今回の意見募集の締切日は、2019年12月11日であった。
審査指南の意見募集案の詳細内容については、国家知識産権局のホームページ(http://www.cnipa.gov.cn/gztz/1143646.htm)をご覧ください。なお、本文に関するお問い合わせは弊所までご連絡ください。